書評 『土と内臓』
読んでから、近くの川や神社から、すこし分解さていれたり、菌がついて白くなっていたりする落ち葉を土付きで拾ってくるようになりました。ミミズを連れ帰りたくなるようにもなりました。
家の小さな庭で、野菜や果物などを収穫したい。また、引越し当初から立ち枯れしていると思われる木が何本かあり、その原因を知りたかった。水が足りなかったのか、陽当たりが悪いのか、土が悪いのか、木が弱かったのか、病気のせいか。
そういうところから、土壌について知ろうと思いました。
原題は"The Hidden Half of Nature: The Microbial Roots of Life and Health"
生命活動と健康の基礎には、目に見えないたくさんの微生物が関与している。
目に見えないものを意識するのは難しい。
しかし、微生物のほうが動植物よりずっと前からいて、動植物は微生物の様々な働きに大きな恩恵を受けている。というよりも、微生物の働きがあることを前提に生命活動が成り立っている。動植物と微生物は生存競争をしているわけではなく、平時は共生している。
植物の根と微生物、ヒトの大腸と微生物、これらの関係は似ている。根や大腸から分泌される物質を摂取して微生物が繁殖し、また微生物から産生されたものを根や大腸が吸収して植物やヒトを潤す。
植物が強く育つには、肥沃な土壌が必要。ヒトが元気に過ごすには、豊かな腸内細菌叢が大事。
土壌を豊かにするためにできることと腸内細菌叢を豊かにするためにできることは、実は同じーーー
内容は、
よい土壌とは
微生物が生まれてから現在までの歴史
植物の生態
ヒトの免疫システムおよび栄養システム
人間と感染症の歴史
と多岐に渡りますが、いろんな話が出てくるようで、これらが、ひとつに繋がり、結末でまとまる展開が気持ちいい。
細菌や抗生物質の発見にまつわる人物のエピソードも面白かったです。
顕微鏡の基礎をつくったレーウェンフック
純粋培養法を発明し、結核の原因菌を発見したコッホ
低温殺菌やワクチンを開発したパスツール
産後の死亡率をさげるには手洗いが重要だとデータで示したゼンメルワイス
ペニシリンを発見したフレミング
ストレプトマイシンを発見したワクスマン
当時の社会背景とともに、人となりがすんなり入ってくる。
読んでいる間から、土壌作りを始めたくなったし、これまで以上に腸内細菌叢を整えたくなりました。
土壌づくりは、とりあえず、庭に落ち葉を積むだけの腐葉土づくりを始めてみました。数ヶ月かかるということなので、気長に。
土嚢袋、土、ぬか、水、生ゴミでできる門田式の堆肥づくりも準備中。
腸内細菌叢を整えるためには、
少食
大腸で細菌が処理できないほどの量を食べない
prebiotics
オリゴ糖、食物繊維
probiotics
発酵食品
また、これまでの診療スタイルは、基本的には「余計なことをしない」を大事にやってきましたが、必要な人には、土壌に対するマルチやコンポストスープ、腸に対するプレバイオティクスやプロバイオティクスのような何かを今まで以上に意識的にやってもいいのかもしれない。
きっと、元気な人やうまくいっている人には余計なことをしないのがいい。でも、何かしらうまくいっていない人や傷んだところがある人には、prebiotics、probioticsにあたる何か、日常を変える何かをやってみてもいい。
そんなことを感じた一冊でした。
土と内臓
The Hidden Half of Nature: The Microbial Roots of Life and Health